循環器内科の勉強法
先に断っておきますが、私はもともと循環器内科を志望して初期研修、後期研修1年目を研修したので、循環器内科については他の領域よりやや難しい教科書を勉強しています。
その上で、循環器内科志望以外であれば極論で語る循環器内科;極論で語る循環器内科 第3版(極論で語る・シリーズ) (【極論で語る】シリーズ)の1冊をお勧めします。循環器内科志望や、私のようにカテはできないけど循環器系の管理には精通したいという人には特にお勧めできる教科書です。
どこの病院でも忙しくカテの助手第二助手三昧になりがちな循環器内科ローテートで「一般内科でも役立つ循環器の知識」を身に付けるのは意外と難しいです。「見ているだけ」にならないようにするには最低限の予備知識を持っておくことが非常に重要です。
おすすめ順に紹介します。
循環器全般の教科書
極論で語る循環器内科
極論で語る循環器内科 第3版(極論で語る・シリーズ) (【極論で語る】シリーズ)
各診療科を回るときにどれもおすすめの「極論で語る」シリーズですが、中でも循環器内科はクオリティが高いです。
循環器の世界ってカテ(虚血)の世界にばかり目がいきますが、右心系、不整脈、弁膜症など様々な領域があり、どれも専門性が高いので、ただローテートするだけでは「お客さん」になりがちです。
この教科書を循環器内科ローテート前に読んでおくことで、上級医に一歩踏み込んだ質問ができ、有意義なものになると思います。
オススメ度:★★★★★
レベル:循環器志望でもそれ以外でも
タイプ:読み物
各科ローテ前に読むと捗る「極論で語る」シリーズも紹介しておきます。
※私が実際に読んだのは循環器内科の他は消化器内科、腎臓内科の2冊ですがどちらもおすすめ。他は読んでないので評価できませんが。
極論で語る循環器内科 第2版 (極論で語る・シリーズ)
極論で語る腎臓内科 第2版(極論で語る・シリーズ) (【極論で語る】シリーズ)
極論で語る神経内科 第2版(極論で語る・シリーズ)
極論で語る消化器内科 (極論で語る・シリーズ)
極論で語る総合診療 (極論で語る・シリーズ)
極論で語る感染症内科 (極論で語る・シリーズ)
心不全治療薬の薬の考え方、使い方
循環器内科のみならず、軽症例であれば何科でも絶対に避けては通れないのが心不全治療ではないでしょうか。
心不全に対する薬の勉強はこれがベストです。現在の慢性心不全の治療薬は”fantastic 4″などとも呼ばれる4剤ですが、少し前まではβブロッカー、ACE阻害薬/ARB、MRAの3剤がメインでした。この教科書は出版のタイミングがちょうどこの3剤からfanrstic 4への過渡期だったので3剤がメインとはなっていますが、これらの薬が使われるようになった根拠となっている文献を引用しながら使い分けについて解説しており、帯に書いてある通り、「なぜこの治療薬を使っているのか」がわかるようになります。またこれら以外の薬剤についても記載があります。
例えばサムスカは利尿の効果があることも、利尿が心不全の予後を改善することも証明されているのですが、サムスカ自身が予後を改善するというエビデンスはありません。これを知っていて使うのと知らずに使うのとでは全然違いますし、心不全管理はこの本レベルの知識が必須だと思います。
循環器内科上級医との会話に困ることもないですし、内科専攻医レベルまで学べます。ただ前述の通り出版タイミング的にsglt2阻害薬とARNiについての記載は少ないので注意です。
オススメ度:★★★★☆(内科志望以外にはオーバーワーク)
レベル:循環器内科志望〜一般内科
タイプ:読み物
不整脈治療薬ファイル
抗不整脈薬ってなんか怖いイメージがありますよね。この本の中でも言及されていますが、慣れていない薬は安易に使うべきではないのも事実です。多くの研修医はまともに抗不整脈薬を使えないまま研修を終えてしまうことが多いですが、上級医の指導のもとで使用経験を積める研修医時代は実は貴重な時間だったりします。
例えば病棟で頻脈性のAFに対して安易にワソランが使われていたりしますが、ワソランは陰性変力作用が強めなので低心機能の人に使うと結構危険です。
また私はこの本で勉強していたおかけでシベンゾリンによる低血糖を診断できたことがあります。
ここまで抗不整脈薬に特化した教科書は他になく、抗不整脈薬の勉強には強くおすすめできます。ただ非循環器内科医はとりあえずオノアクトをつかっておくべき感は否めないので、循環器内科や心臓血管外科、集中治療に携わる科以外にはオーバーワークかもしれません。
オススメ度:★★★★☆
レベル:循環器内科専攻医
タイプ:読み物、辞書
循環器治療薬ファイル
前述の不整脈治療薬ファイルの別バージョンです。心不全の治療薬、不整脈の治療薬を勉強して次に進みたい方におすすめ。ただ不整脈薬治療薬ファイルほどの「オンリーワン感」はなく、極論で語る循環器内科+心不全治療薬の考え方、使い方で十分だとは思います。
オススメ度:★★☆☆☆
レベル:循環器内科専攻医
タイプ:読み物、辞書
心エコーの教科書
まず初めに断っておくと、循環器内科志望以外は心エコーで弁口面積や流速を測ったりする必要はないと思っています。それよりも救急外来で使えるスクリーニングを一通りできるようになりましょう。エコーは座学よりとにかく数をこなすことです。特に循環器内科ローテ中に心筋梗塞の患者さんを受け持ったときが一番のチャンスです。とにかく毎日エコーを当てましょう。だんだんと壁運動の低下が見えるようになってきます。
私がエコーのための教科書を読み始めたのは(経食道エコーの勉強を始めた)3年目になってからで、それでも十分事足りました。
そうだったのか!絶対わかる心エコー
そうだったのか! 絶対わかる心エコー〜見てイメージできる判読・計測・評価のコツ
強いて教科書を使うならこれかな、と思います。というか、心エコーの教科書はたいてい非循環器内科医にはオーバーワークなので、薄くて読みやすい本を選んでおけば良いと思います。これは読みやすく最低限の勉強ができます。
ちなみに私がルーチンで行なっているスクリーニング心エコーは以下の流れです。研修医であればこの流れができれば問題なしです。
傍胸骨長軸像で大まかな動きを確認
↓
短軸像で壁運動:乳頭筋レベルでvisual EF、MR、AS、ARを確認
↓
心尖部四腔像で壁運動、MR→E/A波、TR→TRPGを確認
↓
三腔像でAR、二腔像でMRを確認
↓
IVCを観察
オススメ度:★★★★☆
レベル:研修医〜循環器内科専攻医
タイプ:読み物
レジデントのための心エコー教室
「レジデントのための」シリーズの割にハイレベルです。最新のエビデンスを重要視しているようで、初学者には難しいです。この「レジデント」は研修医ではなく専攻医をさしているものと思ってください。
オススメ度:★★☆☆☆
レベル:循環器内科専攻医
タイプ:読み物
心エコー読影ドリル
循環器で有名な国立循環器センター、天理よろず病院が監修の、問題形式の新エコーの教科書です。弁膜症の詳細な診断のための勉強ができますが、循環器系志望以外にはオーバーワークだと思います。一般内科だけど弁膜症のことも理解したい!という人にはいいかも。動画を見て答える問題です。かなり難しい。
オススメ度:★★☆☆☆(循環器内科、心臓外科、心臓麻酔をやる麻酔科医向け)
レベル:循環器内科専攻医
タイプ:読み物
冠動脈造影の教科書
冠動脈造影(CAG)はある程度読める状態でカテに入らないと、早すぎて全くついていけません。
画像が出ると一瞬で「○○番だね〜」とか「うーん○番どうする?」とかの議論が行われ、知らぬ間に治療が進んでいきます。その時に○番がどこを指しているのか分からないとさっぱり楽しくありません。おすすめの覚え方を紹介します。ひとつの参考にしてください。
①#5=LMTをまず覚える。
②#1〜#4はRCA、#5〜がLCA
③#5〜10がLAD、#11〜がLCxを覚える。(#5は特別として#1〜4、#6〜10、#11〜15と分かれています)
ここまでで#○がどの冠動脈の枝かは間違えないようになります。
④メイン通りが若い番号
LADなら本幹が#6.7.8ときて、対角枝が日本あるので#9.10
LCxなら#11の後、真ん中へ向かう鋭角枝が#12、本幹が#13〜
⑤LADとLCxの見分け方
⑴中隔枝が髭みたいに出ているのがLAD
⑵太い対角枝が出ているのがLAD
⑶LAOではLADが左、LCxが右。RAOではLADが右、LCxが左(例外もあります)
⑥細かい番号の定義を覚える
この最低限を覚えた上で、教科書的にもう少し詳しく勉強したいならこちらをおすすめします。
そうだったのか!絶対読めるCAG
そうだったのか! 絶対読めるCAG〜シェーマでわかる冠動脈造影の読み方
循環器志望でカテの勉強をしたいなら、PCIの教科書を読むべきであり、今回はそのレベルは対象としていません。心臓外科医や熱心な一般内科医、循環器志望の研修医がカテ所見を読むための最初の教科書としておすすめです。実際のシェーマを見ながら何度も見返すことでだんだん見えるようになってきます。
オススメ度:★★☆☆☆(カテに携わるコメディカルにもおすすめ)
レベル:循環器志望の研修医
タイプ:読み物
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