まずは結論から
です。まずは結論。ICUローテートをする研修医、今後集中治療に携わりたい専攻医におすすめの教科書→重症患者管理マニュアル
さらに循環器系、麻酔科志望であればICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2の併用がおすすめ。
ICUの勉強法
ICU、集中治療のおすすめの教科書を紹介します。ICUでは、ERとも一般病棟も少し異なる考え方をします。具体的は 意識、循環、呼吸、栄養、腎、感染、その他というように臓器ごとにアセスメントしていく考え方です。
「救急のABCDE」と近い考え方です。ICUでは一般病棟ではあまり使わないような薬剤やデバイスを用いて細かな調整をしているので、慣れないうちはなんとなく怖いような感じがするかと思います。しかし頻繁にPDCAサイクルをくり返すICU管理は実は多くの学びが得られる場でもあります。研修医でICUを主治医として受け持つ機会は少ないと思いますが、貴重な機会を生かしたいですね。
ここではICUをメインで受け持つであろう診療科(循環器内科、心臓外科、麻酔科、脳神経外科)志望の研修医、専攻医と、ICUをローテートする研修医(上記の科には進まないが勉強しておきたい)を対象として、
- メインとなるマニュアル系の教科書
- 血液ガス、人工呼吸器などの細分化領域の教科書
に分けてご紹介します。
メイン本:マニュアル系
循環器系、麻酔科志望→重症患者管理マニュアル、ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2
icuを頻繁に受け持つほどではないけどしっかり診られるようにはなっておきたい内科志望→ICU実践ハンドブック改訂版〜病態ごとの治療・管理の進め方、重症患者管理マニュアル
ICUローテ→ICU実践ハンドブック改訂版〜病態ごとの治療・管理の進め方
重症患者管理マニュアル
とりあえずICU患者を受け持つ時に1冊持っておくと便利。後述の「実践ICUハンドブック」より知名度は落ちますが、「実際にどうすれば良いか」の記載が豊富です。特に組成例が載っているのが初学者には非常に助かるところです。
例えばAFによる頻脈はICUでよく遭遇しますが、慣れるまでは具体的にどんな時にrate controlをすべきで、どの薬を、どの組成で、どの速度で投与するか、という記載があるので、まさにマニュアルとして使えます。またICUは研究により最新の知見がどんどんup dateされる分野なので、文献的根拠をしっかり示しているのも評価できるポイントです。
私はICU管理にもだいぶ慣れましたが、ヒューマリンRの持続点滴などこの教科書通りの処方をしているものも少なくありません。
オススメ度★★★★★
レベル:研修医2年目〜専攻医まで幅広く
読みやすさ:★★★
おすすめできる人:ICUを受け持つ全ての科
ICU/CCUの薬の考え方、使い方
タイトルの通りで薬の使い方に重点をおいた教科書。持続点滴の組成や速度の記載があり、研修医が終わってからも重宝します。アレルギーなどの理由でいつも使っている薬剤が使えず代替薬を使う時、組成に困らず使えます。
また同効薬ごとの特徴、微妙な違いについても勉強できるので、ICUの主治医を受け持つなら持っておきたい本です。一冊で全身管理、読みやすさでは上の重症患者管理マニュアルに譲りますが網羅性ではこちらが勝ります。
オススメ度★★★☆☆
レベル:研修医2年目〜循環器系の専攻医
読みやすさ:★★☆
おすすめできる人:循環器系・麻酔科志望
実践ICUハンドブック
有名なICUのハンドブック型の教科書です。右も左もわからない状態でのICUローテートをする研修医におすすめ。
各領域ごとにまとまっていてICU管理全般に記載が及んでおり、わかりやすいので初学者にはとっつきやすいです。ICUローテの際に1冊持っていくと重宝します。
ただ書いてあることは基礎的な話が多く、主治医として受け持つ際のマニュアルとするのには情報不足。どちらかといえばICU配属になった看護師や意識の高いコメディカルにオススメ。
オススメ度:★★☆☆☆
レベル:循環器系志望以外の研修医向け
読みやすさ:★★★
おすすめできる人:ICUローテートをする人 ICUに関わるコメディカル
各分野の教科書
ICUでは人工呼吸器や循環補助装置などのデバイスを用いた治療が行われており、これらの理解は座学なしでは不可能です。特に人工呼吸器、血液ガスはどの科でも利用できる領域なのでしっかり勉強しておきたいところ。ただ私はここに関してはあまり多くの教科書を読み込んでいないので選択肢は多くありませんのでご了承ください。
人工呼吸器の教科書
Dr竜馬の病態で考える人工呼吸管理
Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理〜人工呼吸器設定の根拠を病態から理解し、ケーススタディで実践力をアップ!
人工呼吸のことを勉強するならこの教科書を選んでおけば間違いありません。集中治療専門医レベルでなければ困らないレベルになれます。
すごく雑に言ってしまうと、人工呼吸器の設定はとりあえず
SIMV、RR:12、PEEP:5、PS:10、TV:体重×6-7
にしておけば問題ない(実際にはこれは最新のエビデンスからは間違った方法ですが)ので、研修医レベルで人工呼吸器を細かく設定する機会は少ないと思います。ただなぜこの設定なのか?を「病態から」考えられるのが良いです。また、波形にノイズがある場合や形の異常などのよくあるトラブルシューティングについて触れられているのもよいところです。
オススメ度:★★★★☆
レベル:集中治療に携わる科、呼吸器科志望の研修医〜専攻医
タイプ:読み物
Dr竜馬のやさしくわかる集中治療 循環・呼吸編
Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 循環・呼吸編 改訂版〜内科疾患の重症化対応に自信がつく!
上記と同じDr竜馬の集中治療の教科書です。厳密に言えば人工呼吸器だけの教科書ではないのですが、初学者が人工呼吸器を理解するのにはちょうど良い難易度とわかりやすさです。ざっくりと勉強した人にはこちらで十分かも。
オススメ度:★★★☆☆
レベル:研修医2年目
タイプ:読み物
循環補助デバイスの教科書
VA-ECMO(PCPS)、IABP、LVADといった循環補助デバイスの教科書です。このレベルになると研修医レベルではあまり触ることはないかもしれませんが、麻酔科、循環器内科志望向けに基礎的なものを紹介します(私も正直精通しているレベルではありません)。CHDFも一応ここに含んでおきます。
こういうことだったのか!ECMO・PCPS
VV-ECMOやPCPSがついた患者さんを受け持つ研修医は稀だと思いますが、理解しておきたい方にはこの教科書がおすすめです。値段も安く薄いのにざっくりと理解することができます。ただ、補助循環装置というのは何が起きているかを想像しながら実際に触ってみないとなかなか理解でできないものです。最低限の理解をして、とにかく(上級医の指導のもとで)触ってみましょう。
基礎から学べますが分野自体がハイレベルなので難しいです。
オススメ度:★★★☆☆(循環器内科志望には★5)
レベル:循環器系志望の研修2年目〜専攻医
タイプ:読み物
同じシリーズのこういうことだったのか!! CHDFもおすすめ。
最新にして上々!補助循環マニュアル
最新にして上々! 補助循環マニュアル (CIRCULATION Up-to-Date Books 08)
私がお世話になったすごく優秀なCEさんにおすすめされて買った本。
上記のこうだったのか!シリーズは仕組み・理論の理解には良い教科書ですが、実際にIABP、PCPSを触る上ではやや不安があります。研修医で循環器内科ローテートをするだけなら完全にオーバーワークですが、循環器内科志望ならこの教科書がおすすめ。かなり詳しい記載があり、基礎的な内容も多いので初学者からも使えます。
特に波形のアセスメントの考え方が即実践に使えるので、まさにマニュアルとして使用しやすいです。ICU・CCU担当のCEにもおすすめ。
オススメ度:★★★☆☆(循環器内科志望には★5)
レベル:循環器系専攻医
タイプ:読み物、辞書
血ガスの教科書
竜馬先生の血液ガス白熱講義150分
血液ガスの基礎の基礎。とりあえずこれだけ読んでおけば研修としては合格ラインです。わかりやすいしタイトル通り150分で読めます。ただし内容としては初歩的である程度救急外来をやっていたら知っていることしか書いてないかもしれません。
オススメ度:★★☆☆☆
レベル:研修医1年目
タイプ:読み物
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