国試合格後、研修医として働き始めるまでに読んでおきたい教科書

決定版

国家試験合格後、なんとなく暇だし研修医になる前に少し勉強しておこうかな、という人におすすめの教科書を紹介します。

まず前提として、当ブログでは「早く触れるものから勉強する」ことをお勧めしています。具体的には 輸液、心電図、抗菌薬、胸部レントゲン などです。また領域でいえば自分の志望科+救急だと思います。この記事では上記の教科書のうち、国試終了後の医学生が初めの1冊として読むのにおすすめのものを紹介していきます。

選考基準としては

  • 初学者が読むのにとっつきやすい
  • 比較的薄くて春休みの間に読み切れる
  • 研修医として働いてすぐに役立つ

上記を優先しています。また、臨床経験がないとイメージしづらい領域、逆にいうと臨床経験さえあればサクッと身についてしまう領域については、座学による勉強のコスパが悪いので優先順位を下げています。

以上の考え方から、心電図>胸部レントゲン>救急>抗菌薬>輸液 の順でお勧めしています。抗菌薬、輸液も重要ではあるのですが、最低限の知識は耳学問で十分だと多います。座学での勉強は余裕がある人、または私の図が気に入らない人にお勧めします。

お勧め順に紹介します。

心電図の教科書 @1冊目

心電図は研修医になってすぐに読む必要があり、また座学での勉強が有効な領域です。また上級医から突然「この心電図どう思う?」と無茶振りされがちです。初めに勉強するのをおすすめします。

3秒で読める心電図

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国試で出てくる心電図はSTEMIやpseudo VTやtorsades de pointesなどの派手かつ異常な心電図がほとんどだったと思いますが、実臨床で最も重要なのは「正常な心電図を正常と判断すること」です。その点でこの教科書は心電図のスクリーニングを3秒で、というコンセプトで、非常にわかりやすいです。「何が正常かを知る」というのが簡単なようで難しく、なおかつ重要なことです。

オススメ度:★★★★★
レベル:★★★☆☆
ページ数:172ページ

レジデントのためのこれだけ心電図

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上記の教科書よりさらに初学者向けです。学生時代に心電図が苦手だった人はここから始めても良いですが、しばらくしたら追加の教科書を読むことをお勧めします。

オススメ度:★★★☆☆
レベル:★☆☆☆☆
ページ数:240ページ

もっとしっかり心電図を勉強したい人はこちらもご覧ください。

胸部レントゲンの教科書 @1冊目

胸部レントゲンも心電図と同じく、突然上級医から「このレントゲンどう思う?」と言われがちです。またしっかりと教科書的な勉強をしていないと「なんとなく白いな〜」「心臓大きいな〜」で終わってしまい、さらに「CT取ればいいっしょ」という雰囲気になりがちで、半年、1年経ってもまともにレントゲンが読めないまま、という研修医が少なくありません。早く教科書的な勉強をしておき、定型的な読影をする癖をつけておきたいです。

レジデントのためのやさしイイ胸部画像診断

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正確にはレントゲンだけでなくCTについても解説がありますが、初学者から初めて研修医に求められる到達レベルまでしっかり学べる良書です。これだけ理解していれば上級医から一目置かれる存在にはなれると思います。

オススメ度:★★★★☆
レベル:★★★★☆
ページ数:328ページ

救急の教科書 @1冊目

研修医になりたての頃に一番精神的にしんどいのが当直だと思います。右も左もわからないのに、ERのベテラン看護師に「早く指示出して!」と急かされたり、外科の上級医が全然見に来てくれない上に怖くて相談しにくかったり…。

もちろん座学での勉強・知識も重要ではあるのですが、どうしても臨床経験、慣れがものを言う世界なので、教科書を頑張って読んでいてもなかなかうまくいかないと思います。その点でここでは「初動」を勉強するのに良い教科書を紹介します。

京都ER

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第2版が予約受付中みたいです!→https://amzn.to/3D5rnSS
(国試終了時点では普通に販売中っぽいです)

救急の教科書はいくつもありますが、「京都ER」は症候ごとの「対応の流れ」が記載されているのが良い点です。各症候に「アタマの中 救急搬送までの5分でcheck」というページがあるので、救急隊からの連絡があったらそこを読んでファーストタッチをする、という流れで使えます。入職前にあらかじめざっくり読んでおくとイイと思います。

研修医以降でもバイブルとして使いやすくおすすめです。

オススメ度:★★★★★
レベル:★★★★☆
ページ数:408ページ(つまみ読みでOKです)

あなたも名医!もう怖困らない救急・当直

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救急当直の「コツ」的なことを記載した教科書です。薄くて読みやすくて実践的で良いんですが、どうしても臨床経験が少ないとイメージしにくいのが玉に瑕。オススメ度は京都ERには劣りますが、読み物として読みやすいのでお勧めです。

オススメ度:★★★☆☆
レベル:★★☆☆☆
ページ数:288ページ

誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた

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コロナ時代になり状況は変わりましたが、最大のcommon deseaseである風邪=急性ウイルス性上気道炎の診断をきちんとできるようになっておくのは非常に重要です。

オススメ度:★★★☆☆
レベル:★★☆☆☆
ページ数:320ページ

こちらでは他の救急の教科書を紹介しています。

抗菌薬の教科書 @1冊目

医者になるとわかりますが、一番よく使う薬って結局抗生剤です。しっかりと理論を持って抗菌薬選択をすることは重要ですが、臨床経験がないとやはりなかなかイメージしづらく座学での勉強が難しいです。教科書を読むのであれば簡単なものがお勧めです。感染症が好きなら初めから”岩田本”もありです。基礎の基礎ならこちらのツイートを参考にしてください。

※CTMの欄に誤りがあります。
誤:セフォタキシム → 第3世代,略称CTX
正:セフォチアム

ぜったいにわかる抗菌薬はじめの一歩

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初学者向けのとっつきやすい抗菌薬の教科書です。内容は簡単めですが学生で読むのにはいいかも。

オススメ度:★★☆☆☆
レベル:★☆☆☆☆
ページ数:206ページ

抗菌薬の考え方、使い方

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有名な岩田健太郎先生の教科書です。感染症診療の「考え方」を学べます。「抗菌薬を使わないという選択」など、勉強不足の先生たちの古くて変な慣習に染まる前に読んでほしい教科書です。決してマニアックな内容ではなく、実臨床に即していますが、学生にはやや難しすぎる印象も受けます。

オススメ度:★★★★☆
レベル:★★★★☆
ページ数:586ページ

もっとしっかり感染症の勉強をしたい人はこちらも参考にしてください。

輸液の教科書 @1冊目

研修医が初めに任される仕事は「オーダー出し」です。とりあえずよくわかんないけど上級医の指示通りに電子カルテ上で点滴オーダーを打ち込むだけ、というお仕事ですが、「適当に輸液出しといて〜」という無茶振りをされることがあります。この「適当に」は決して「テキトーに」ではなく、「それほどこだわる必要はないけど不適切な有害事象が起きないように」なので、基礎の知識がないと厳しいです。そのレベル基礎知識を付けるのは簡単ですが、ややこしい電解質異常の「輸液治療」はとても複雑です。基礎の基礎なら、こちらのツイートを参考にしてください。

レジデントのためのこれだけ輸液

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教科書を読むならこれがお勧めです。重要なことに絞っているので読みやすくでイイ感じです。ただ前述の通りオーバーワークかも。

オススメ度:★☆☆☆☆
レベル:★★★☆☆
ページ数:288ページ

以上です。国家試験がいくら臨床寄りに変化しつつあるとはいえ、実臨床ですぐに使える知識が少ないことは上級医もちゃんとわかっています。焦らず少しずつ勉強していきましょう。目指せ「スーパーレジデント」!
私がお勧めする教科書のまとめはこちらです。

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